三人の男

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波瀾万丈な世の中に生きている幕末の人間は、 死なないために、 生き残るために、 野望を叶えるために、 日々稽古を積み重ねているから 精神的にも肉体的にも強い。 しかし、翼はそんな彼らを上回っているのだ。 それほどまで強い、 翼の“強さ”とはいったい何なのか。 実際戦った斎藤は、 身を持って感じたのであった。 ずばり、翼の“強さ”とは心である。 翼の我流である戦法は、 恐れ、戸惑い、恐怖、迷いなどを一切感じられない。 それはまるで、 死ぬことを恐れていないようである。 また、戦うということに 何の疑問も感じず、宿命と捉えているようである。 死ぬ覚悟と戦う宿命を受け入れた心が、 翼の“強さ”の源。 そんな、悲しくて危ない“強さ”を翼は持っている。 ならば、未来の人間も翼と同じ“強さ”を持っているのだろうか。 斎藤は一抹の不安を抱いたのだった。 「………彼にも、何かあったんだろうね。」 藤堂の声は静かに空気に吸い込まれていった。  
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