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波瀾万丈な世の中に生きている幕末の人間は、
死なないために、
生き残るために、
野望を叶えるために、
日々稽古を積み重ねているから
精神的にも肉体的にも強い。
しかし、翼はそんな彼らを上回っているのだ。
それほどまで強い、
翼の“強さ”とはいったい何なのか。
実際戦った斎藤は、
身を持って感じたのであった。
ずばり、翼の“強さ”とは心である。
翼の我流である戦法は、
恐れ、戸惑い、恐怖、迷いなどを一切感じられない。
それはまるで、
死ぬことを恐れていないようである。
また、戦うということに
何の疑問も感じず、宿命と捉えているようである。
死ぬ覚悟と戦う宿命を受け入れた心が、
翼の“強さ”の源。
そんな、悲しくて危ない“強さ”を翼は持っている。
ならば、未来の人間も翼と同じ“強さ”を持っているのだろうか。
斎藤は一抹の不安を抱いたのだった。
「………彼にも、何かあったんだろうね。」
藤堂の声は静かに空気に吸い込まれていった。
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