歌姫と居場所

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歌姫と居場所

 笛吹きの男は、気まぐれな旅の途中に悲しそうに泣く少女に出会った。暗がりで啜り泣く姿にはぎょっとしたけれども、透き通るような声に興味を持ったから。少女は泣きながら、居場所がないの、と嘆き悲しんだ。笛吹きは、なら俺を居場所にすれば良いと、手を差し伸べる。そうして少女は笛吹きの手を取った。笛吹きは言った。 「俺の為に歌え。それが良い」  それから今までずっと、少女は笛吹きの為の歌姫なのだ。
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