罪人

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この世界は、正義に侵されている。 そう思うようになったのは、いつの頃からだっただろうか。 ―― 馬鹿みたいに暑い日だった。 「あぢ~、だり~」 「ちょっと!それゆーなよぉ。余計しんどくなるじゃん」 「むり~…。しゃべる気すら失せる~」 などと、学校の屋上で話していると、同級生だった矢野麻衣子は言った。 「これ、興味ない?」 と、それが悪夢のはじまりだった。 「…何それ?ラムネ?」 その時は本当に、ラムネのような小さなお菓子のように見えたんだ。 何も気づかなかった。 「すっごくうまいから!食べてみてよ」 満面の笑みで、小さくて丸い白い“何か”を、俺の目の前に差し出す。 何の躊躇も悪気も迷いもなく、ただ純粋におすそ分けをするように。 だから、俺は何も気にしないでいただいた。 それだけのことだった。
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