初秋*すき、きらい。

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予鈴が鳴って、あたしは自分の席へ。 隣の香西くんはまだ宿題を写している。 どうやら、社会。 「おはよ」 「おっはよー。ねーねー、奥村は宿題やってきたー?」 「普通はしてくるんだよ」 「えらーい。俺の代わりに、理科書いてくれてもいいよー?」 一体、何教科あるんだろう。 「やだ」 「だよねー。あははっ」 うん、いつも通り……。 受験生の自覚が感じられない、いつもの調子の香西くん。 笹本さんには、何か言ったのかな。 どう応えたの? 「ねえ、小夏に」 言い途中で、カシャーン!と音を立てて、缶のペンケースが床に落ちた。 落とした本人は、ペンを持つ手を止めて、固まっている。
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