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カタ……。
女の左に座り、カウンターの上に自分の手を交差した。
カチャ、と時計が平面にあたる。
カウンターにその手だけ残し、体は彼女に向けた。
「どうも」
「……どうも」
「隣いい?」
「もう座ってるじゃない」
女はにっこり笑った。
ゾクッ……、とした。
変な余裕を感じさせる、妖艶な眼差し。
いいね。
……思っていた通り、いい女。
「あ、ギムレット」
視線を送って、マスターに酒を頼む。
彼は、はい、と静かに微笑んで返事をした。
「1人?」
「1人」
「寂しいね」
「寂しくないわ。
あなたが来てくれた」
俺の目を逸らさずに見つめ返す。
この女、なかなか慣れている。
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