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だが妖気が強力な妖ほど、あの結界には近付く事は出来ない。
その事実も、雪女は知っているのだ。
やはり、城は渡さない気か。
数分の間、雪女は考え込んでいた。
「分かったよ、やってやろうじゃないか」
「ほう、出来るのか?」
「出来なきゃ褒美にありつけないなら、やるしか無いだろう」
雪女は、冷静だった。
大妖の挑発に乗った訳じゃなく、このやり取りの中で何かの策を思い付いたのであろう。
雪女は、社を睨み付けていた目を切って立ち上がる。
「先ずは、あの兄ちゃんが妖界が来るのを待つとしようかね」
大妖は、それに応えない。
もはや雪女との会話に関心が無くなり、眠りにでもついたように沈黙している。
雪女には、それすらも挑発だと感じていた。
だがそれも、数分の後には会話が再開されない事に気付き、天守閣を後にすべく窓際から身を乗り出した。
そこに、カラス天狗が飛翔した。
「この城を、手にするつもりなのか?」
「なんだい、立ち聞きとは随分と趣味が悪いんだね」
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