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由夏が、斜め後ろから溜め息のように呼ぶ。
振り返って視線を合わせると、困ったように首を傾げた。
「どうしたの? 由夏さん」
「どうして――なにも聞かないの?」
「聞いてほしいの?」
重ねて問い返すと、由夏は眉をしかめるようにして俯いた。
なにから逃げてきたの、とか。
女であることに負けたという本当の意味とか。
――由夏さんは、俺に聞いてほしいと思うの。
本当に?
「私は――…」
「うん」
「どうしたらいいのか――どうすれば、いいのか……わからない」
「ねぇ――由夏さんの幸せは、どこにあるの?」
大事なのは、それだよ。
間違えないで。
俺の幸せは、今ここにあるよ。
振り向けばあんたがいてくれるこの距離が、愛おしい。
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