高木雄大 11

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 由夏が、斜め後ろから溜め息のように呼ぶ。  振り返って視線を合わせると、困ったように首を傾げた。 「どうしたの? 由夏さん」 「どうして――なにも聞かないの?」 「聞いてほしいの?」  重ねて問い返すと、由夏は眉をしかめるようにして俯いた。  なにから逃げてきたの、とか。  女であることに負けたという本当の意味とか。  ――由夏さんは、俺に聞いてほしいと思うの。  本当に? 「私は――…」 「うん」 「どうしたらいいのか――どうすれば、いいのか……わからない」 「ねぇ――由夏さんの幸せは、どこにあるの?」  大事なのは、それだよ。  間違えないで。  俺の幸せは、今ここにあるよ。  振り向けばあんたがいてくれるこの距離が、愛おしい。
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