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『明日は休みか…今日は帰りに〈潮山海〉で一杯やるか…』
そんな事を考えながらバンを店へと走らせていた…
携帯のバイブの振動がポケットから伝わる
ー着信…ボスー
ボス『あぁ~俺!今大丈夫かい!悪いが配達頼むよ…加代ちゃんに言っといたから…悪いねぇ…』
大地『はい…』
耳が痛い、声がデカすぎる
ボス『女だよ、お・ん・な…期待した?あはは…残念、オバサン!60前、ほら、キクちゃん、まぁ、頼んどくさかい…宜しく』
電話は一方的だ
いつもの事だが、もう酔っ払ってやがる…
まだ夕方4時
店の店主…木村泰造(57)
花屋〈花折々〉の三代目
二代目を大学時代に亡くし、学校を中退し独学で店を支える
お酒が大好物だ
そんなボスもこの業界では名の知れた華道、アレンジメントの師範も勤める
見かけはアニメのジャイアンを大人にした感じ…と、説明するのが一番分かり易い
まったく、相変わらずだ
そのまま携帯のアドレスを開き花折々を捜し、ダイヤルする
加代『ありがとうございます!花折々です』
明るい透き通った声
ボスの声を聴いた後だと、安堵感が、ふとよぎる
大地『ボスに聞いてる?配達…』
加代『あっ、お疲れ様です、聞いてますよ、送別会の花束です8時に潮山海に』
大地『あっそう、予算は…うんわかった、後、受け取る方は男?女?どっち…あっ、そう…じゃあ、ガーベラの黄色、オレンジ、後、楓入ってる?…んじゃあ、水揚げしといて』
ちょうど良かった
一杯行くつもりだったし
バンは銀杏並木の御堂筋を走る…
そろそろ銀杏も気の早い電飾に衣替えだなぁ…
街並みは冬支度に入り、気の早い店は赤と緑にイメージを変え始め、冬を迎える準備をしていた
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