15.

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「廣田さんは短大時代に好きになった人。もう会えない。」 「何故?」 「死んだから。」 駿君の息を飲む音が聞こえた。 「廣田さんはあの人の事を片想いしてた。私は二番目で良いからって付き合った。あの日、廣田さんはあの人の運転する車に乗って事故に遭って死んだ。」 「初めてのデートだって嬉しそうだった。苦しかったけど、私に口なんかはさむ権利はなかった。本当は行かせたくなかった。あの時、行かせなかったら…」 「私は廣田さんを愛してる。絶対に忘れない。あの人みたいに忘れない。」 私は止まらなかった。 駿君は何も言わなかった。 でも、駿君の目は今まで見た中で一番真摯で、私をジッと見つめていた。 哀しそうな切なそうな色を湛えて。
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