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そんな私にも、彼に問い掛けたい事が幾つもある。
ソフトクリームの冷たさに、やっと心と身体の温度が調和をとれた頃、私はソレを口にした。
「ヒカルもパパになったんだね。何年も過ぎてしまったけど…おめでとう」
「あ…そっか、そうだよな。俺、まだミユに報告出来てなかったんだよな」
「ふふっ、凄く可愛いんだろな、ヒカルの子供は。ねぇ?けど今日は誕生日なのに、何で一人なの?あっ、もしかして公園の中に居るのかな?だとしたらゴメンなさい!引き止めたりして私、迷惑だったよね!」
「違うんだ…」
「…??」
一瞬、視線をずらした彼の瞳が一呼吸置いて、再び私に向けられた。
「実はさ、子供…居ないんだ。あの時ミユと別れてすぐ…流産しちゃったんだ」
「え…………………」
彼の幸せを願い、ほんのりと淡い気持ちに浸ろうしていた私の頭上から、予想も出来なかった言葉が重々しくのしかかった。
「天罰が下ったんだと思ってる…。俺のせいで結果、ミユも千夏も傷付けてしまったから…」
「……………………」
我が子を愛するが故に溢れる母性が、言葉の代わりにやるせない涙を流し、彼の悲しみと溶け合いながら、私の両頬をゆっくりと伝っていった。
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