プロローグ

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雨が降るなか、一人の少年が傘をささずに立っていた。 少年の肩は震えている。寒いからじゃない。耳を澄ますと雨の音に混じってすすり泣く音が聞こえてくる。 足元を見ながらまったくその場を動こうとしない。視線の先を見てみると、そこには人形が一つ、倒れていた。 金色の髪に白い少女の人形。少年は膝をつき、胸に亀裂が走った人形を腕の中に抱くと、暗く、重い雲が漂っている空に叫ぶ。 その声は木霊し、しばらくして雨の音と共に消えていった。
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