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まだ震える声でそう言いながら、現八はそっと大角を見上げた。
――はっとするような美しい顔である。
障子を通した月光が、柔らかく彼の形のよい顔を照らし出していた。
まだ少し青白いが、少し赤みを差した小さな唇に、頬に残った涙の跡、そしてまた今にも泣きそうな不安げな瞳。
――それが禁欲的な容貌を更に引き立たせている。
大角は再び抱きしめたいのをぐっと堪えて、現八の視線を受け止めた。
しかし、次第にそれも辛くなってくるのを大角は感じ始め、彼はすっくと立ち上がる。
「大角」
「布団を敷きますから今日はもう寝なさい、現八殿」
「・・・」
何故そこで物寂しそうな顔をするのだ。
私はさっき貴方に酷いことをしたのに・・・。
「大角・・・」
さっき泣き崩れたせいでずるずるになっていた彼の着衣は、彼が動くことでさらに乱れる。
乱れた衣服から覗く白い肌はなめらかで光沢すらあるように見えて・・・
(目に毒すぎる・・・)
はぁとため息をつきながら、大角はそっと現八の両肩を掴んだ。
「もう寝なさい現八殿。体に毒です」
「でも」
「頼みますから!」
突然の大角の大声に、現八はビクッとなる。
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