―夕暮れの夜明け―

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「悪いけど要迎えに行ってくれるか?絡まれて遅くなったら食うのも遅くなるからさ」 「いいけど…拓は?」 「買い出し」 真兄が言い出したのは嘘だけど、作るのは俺だからナベにすれば問題ないだろう。 嘘を本当にすればいい。 「あ、さりげなくな」 「分かってるよ、わざわざ迎えに来たって知れたら要ちゃん怒るもんね」 そう、面倒な妹だ。 竜羽もよく分かってる。 「買い出し一人で大丈夫?」 「冷蔵庫に野菜あるし、肉だけだから平気だよ」 心配する竜羽を安心させる。 冷蔵庫の中身はいつも把握している。 なんせ『主婦』みたいなもんだからな。 「…すき焼きもいいな」 ふと思いたって提案するが、竜羽はみんなと食べられるならどっちでもいいと言うから今は決められない。 「んじゃ、帰ったら2人に聞いてメールするよ」 「おう、頼むわ」 鞄を持って教室を出ようとする俺を、何故か竜羽はじっと見ていた。 「…何?」 俺…変なとこあった? ちょっと焦っていると、急に両頬を思いっきりつねられた。 「ひゃ…ひゃひすんりゃよ、きゅうりぃ!?」 「何言ってるかわかんないねぇ」 自分のせいでうまく喋れないってのに、笑いながら呑気に言う。 全く、相変わらず意味不明なトコがある奴だ。 「さ、早く行こうか」 ようやく手を離して先に教室を出て行ってしまった。 …なんだったんだ?今のは…。 そうして俺達は校門で別れた。 ②要の安全確保&竜羽へのごまかし―――完了 .
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