―夕暮れの夜明け―

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「…―く……た―………拓!」 「………んぁ……?」 聞き慣れた声で心地よい夢から現実世界へと引き戻される。 もう放課後だと、聞き慣れた声は教えてくれた。 「……ん……あぁ~……よく寝た~」 「むしろ寝すぎ」 大きく伸びをした俺の寝癖をつまみながら呟く。 昼に起こされて弁当を食べた以外はずっと寝ていたから、さすがに体が痛い。 ま、少し動けばいつも通り動けるだろうし…問題ナシだ。 「さて…帰る?」 「おう!」 竜羽の問いに、俺はすっきりした顔で答える。 「…あ、そういや今日ナベにするから竜羽も連れて来いって、真兄が」 「え、いいの?」 「当たり前じゃん」 そう言うと、竜羽は嬉しそうに笑った。 一人暮らしの竜羽は、実は放っておくとご飯を食べない。 「めんどくさいんだよね~」なんて軽く言うけど、そんな問題じゃない。 昼一緒に食べるだけ…信じられない少食だ。 …多分、1人で食べるのが嫌だというのも理由の1つだろう。 …まぁ…今日のは俺の嘘だけど…誘うと本当に嬉しそうな顔をするんだ。 .
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