ミラクル

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 ある日、僕は『ミラクル』という言葉について考えていた。  ミラクル。  奇跡と似ているけど、ミラクルはちょっと明るい感じがする。  ミラクルハッピーとか言うよね。  これでミラクルについての説明はほとんど出来たと思う。  だけど、ここで終わったらただの読書感想文。読書してないからただの感想文か。  とにかく、せっかく僕の物語なんだからもうちょっと主役でいたい。  と言うことで、僕は『ミラクル』を実感する旅に出ることにした。  オレはコイツと旅に出る! なんて全米でよく流行っているけど、一緒に旅に出る『コイツ』はいない。真っ黄色なねずみはいないのだ。あしからず。  でも、一人きりで旅は寂しい。だからまずは一緒に旅へ出る人を探したいと思う。 「僕と一緒にミラクルを探す旅に出てくれる人はいませんか~~!?」  ホームルーム中の教室が凍りついた。  不思議なことに、一緒に旅をしようと名乗り出てくれる人は誰一人としていなかった。  おかしい。僕はこの物語における主人公のはずだ。  何かやろうと思ったら勝手に人が集まってくるものじゃないのか。  だから僕は、僕が本当に主人公なのか確かめる旅をすることにした。 「ねえねえ、僕って主人公だよね」  授業休憩を見計らって声をかける。  声をかけられた女子生徒はまじまじと僕を見た後、すたすたと立ち去っていった。  大丈夫。どうやら僕は主人公のようだ。  無理してなんかいない。  これが巷でうわさの『ツンデレ』というやつなのだろう。  主人公にツンツンする女の子がいるのは一部物語のお約束だ。  主人公だという確証が得られたところで、当初の目的に戻る。  ミラクルを実感する旅に出よう。  一緒に旅へ出る人を探してから。  一緒に旅する人を探して中庭までくると、弁当を食べている物静かそうな少女がいた。 「コンニチハ。イイテンキダネ」  さっきは事を急ぎすぎた。  いきなり旅に出ようなんてショートカットをしようとしてはいけない。  物語の主人公はぐだぐだと二転三転するものだ。  その禁を破ったから、さっきは主人公補正が得られなかったのだろう。  だから僕はまずおしゃべりでもして相手と仲良くなってから旅に誘うことにした。  的確な話題を切り出すと、いかにも物静かそうな彼女は――、
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