序章:前奏曲<プレリュード>は、既にこの時から

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 ここまで凡人なりに頑張ってきたつもりではあった。自分の進むべき道は自分で切り拓こうと、それなりの決断もした。  ――今このシュールが過ぎる瞬間を除いては。 『ただ、事実は事実として受け止めて欲しい、ってだけさ』  眼前で、これまたシュールなほど眉目秀麗な青年が、流れるような所作で立ち上がる。一方の肩に流された淡い金髪も、珊瑚礁の海のように深いブルーグリーンの瞳も、耳元にキラリと輝く環状のイヤリングも全て、その端正な容貌を印象づける。  少女の頭はパンクしそうだった。椅子に座り、テーブルに向かったままじっと考えても、答えなんて出ない。 『俺達は、血を分けた本当の兄妹なんだよ』  なんて軽く言われて、どうして瞬時に呑み込めようか。  目の前のこの青年は、ただの若者ではない――十六年前に僅か六歳で即位した、一国の王だ。  ここに至るまでの経緯を明らかにするには、少し時を遡る必要がある。
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