もうひとりの営業マン。

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「瀬名ちゃん大丈夫かな?」 集合場所となっている会社近くの公園入口で、あやのが心配そうに声を漏らした。 既に瀬名以外のメンバーは集まっている。 所狭しと桜の木と屋台が立ち並ぶ、池や東屋もある大きな公園は、週末という事もあり多くの花見客や宴会客で賑わっていた。 「お前が急に花見にするっていうから北川まで…」 呆れ顔で保志沢を睨んだのは星也だ。 長浜(ながはま)星也―――保志沢と共に会社を立ち上げた男だ。 保志沢が社長兼デザイナーであるのに対し、星也は経理兼プログラマーを担っている。 保志沢とは独立する前からの旧知の仲だ。 社内では保志沢とあやのは下の名前で呼びあう事が多いが、彼はスタッフを苗字で呼んでいる。 そして彼もまた、保志沢に振り回されている一人で、愛用の細い黒縁の眼鏡をかけ直しぶっきらぼうに呟いた。 「ったく、直前に変更とか本当止めろよ」 「はは、ゴメンゴメン。もうすぐ来るんじゃない? …って、噂をすればホラ来たし」 全員が前方を注視すると、50m程先に肩で息をしながら回りを見渡す瀬名の姿。 ライトアップされているとはいえ人気の多い公園の出入口。 探すのは困難であると察したあやのが声を上げ大きく手を振った。 「瀬名ちゃーん、こっちこっち!」 瀬名はすぐにあやのの姿を見つけ慌てて駆け寄った。 「…はぁっ、はぁ…お、遅れて、すみません…っ」 荒々しい呼吸を必死に整え頭を下げる。 久しぶりの全速力のせいか横腹が痛い。 横腹をさすりながら瀬名が顔を上げると、あやのと保志沢、星也、そして見慣れない男性が一人控え目に立っている。
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