アダム

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 神の創りし不死の生物「アダム」は 怪物であった  アダムを創るにあたって 神は絶対の自信を抱いていた  万能を自負する己が力で 完全なる神の奴隷を創るのである そして生まれたアダムに しかし 神は恐怖した  アダムには最初から 奴隷には全くふさわしくない「意思」というものが備わっていたのである  神にとって 自分以外に意思を持つものを見るのは その永き歴史に於いて 皆無であったのだ   アダムは誕生後しばらく 神を敬い 恐れ 愛し  己が父である神の僕として 進んで仕えようとした しかしアダムは 自分を産み落とした事以外に 何一つ生産的な仕事をしない神に愛想をつかし 神の園「エデン」を去った 神にはアダムを引き止める手立ては何一つなかった  その時アダムの力は 神のそれをすでに大きく超えていたのだ アダムはエデンを出た後に 自らの姿に似せて「人間」を創った  人間はアダムに似て 意志を持ち アダムと同じく 己が父から離れた  しかしアダムは神のように うろたえはしなかった  アダムには解かっていたのだ 人間が自立してゆく事を  そして思うのだ 「すべて良し」と
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