*第一章*

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私が生まれる少し前に、おばあちゃんが他界した。 祖父と離婚し、女手一つで父を育て上げたおばあちゃんの死因は、過労死だった。 お母さんは、三年前に事故死した。それだけの事でいとも簡単にこの世を去った。 血族の縁とはそれぞれの意思とは関係なく、いとも簡単に無に帰すものである。 なので、お父さんに転勤の話をされ、会った事の無い祖父と共に暮らせと言われても、血の繋がりがあるのならこれも縁と別に何の反抗も持たなかった。 どうせ三年経てばすぐに消えてしまう縁なのだから、どんな嫌な人だったとしても我慢すれば良いのだ。 ――まさか相手が野獣系だなんて、その時の私は思いもしなかったのである。 とはいえ、私は余程に神経の図太い女だったらしく、この暮らしとあの顔に馴れるまでは一週間もかからなかった。 一番の驚きは、昨日、入学式を迎えた高校に初めから馴染めた事なのだが。 私は世間一般的に見ればなかなかまとまった顔つきのようで、東京の中学校では、あまりよろしく思われない存在だった。 というより、そこの女ボスが片思いしてた男子生徒が私に想いを寄せていたようなのだ。 そうなれば、他の女子達は必要以上に私に近寄らないし、ボスグループの女子達からは虐められるしで散々な三年間をおくった。 生来の八方美人な性格がよく転がって、あからさまな嫌がらせは無かったのが救いだろう。 なんだかんだ、仲の良い女子や男子は居たのだ――皆『南風原(はえばる)さん』だなんて名字で呼ぶ他人行儀ではあったが。 だからこそ、ローカル(舞鶴)高校の生徒達の反応に驚いた。 初めて話しかける時から『朱里』と下の名で呼び捨てだったから。  それはなんともこそ痒く、居心地の悪いものだった。
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