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彼女が自分にドキドキすることってあるんだろうか。
微笑む姿を見て、ふとそんな疑問がよぎった。
鈴木と話をしている時、長岡にドキドキするって、確かにそう言っていた。
「あのさ」
「…?」
「長岡にドキドキするの?」
一条さんが戸惑うことは分かっていて、そんな質問をした。
「…何でいきなりそんなこと。もしかして…さとりちゃんと話してるの聞こえてた…かな」
予想通り、口をパクパク開けてしどろもどろ。
「うん、聞きたくなくても聞こえてきたからね」
「…ごめんなさい」
「いや、謝られる筋合はないと思うけど」
「…」
愚かだ。
今日音楽室へ一条さんを連れてきたのは、そんな質問をするためではない。
ただ、いつもの笑顔に戻って欲しくてピアノも弾いたのに。
困らせることを分かっていて、俺はまた…
愚かだ。
「俺が長岡と同じことしたらドキドキするの?」
「えっ」
「マフラー、巻いたらドキドキする?」
「…知らないよ」
一条さんはすごく気まずい表情をしているのに俺の質問は止まらなかった。
「一緒に帰ったらドキドキする?」
こんなことを質問してるのに、俺の声音は至っていつもと変わらない。
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