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小さく音をたてた窓。 不審に思いカーテンを明けた東別は、器用に片方の眉毛をつりあげた。 「お前ここ何階だと思ってんだ」 「あはは。ねぇ開けて」 「玄関から来い」 極わずかな幅に足をかけていた緋色は、窓の外側から不満の声を上げた。 「こったら下に行くのは無理」 「しょっちゅう自殺行為に及んでる奴が何言ってんだ」 呆れながらも東別は窓を開ける。 緋色はまた自分の胸が悲鳴をあげるのに気がついた。 「真冬ちゃんの馬鹿」 「……突き落とされたいか」 緋色はスルリと隙間から部屋に上がった。 もちろん靴は脱いでいる。 最後に遊びに来てからまだ1ヶ月もたっていないはずなのに、東別の部屋はひどく懐かしかった。 「ごめんね」 「それは何に対してだ。窓から夜遅くに訪問したことか?生徒会に目をつけられたこと?戦争中にエアガンを振り回したこと?その騒動にまぎれて生徒会長を襲撃しようとしたこと?それとも」 「うん。とりあえず全部」 まだまだ出てきそうな自分の非行に、緋色は遮るように頭を下げた。 そして下げた頭を緩く振った。 「ごめん」 東別は何も言わない。 頭のいい彼はきっと気づいてくる。 少し視界が揺れて、緋色は客観的に“あぁ自分はずいぶん弱くなったなぁ”とぼんやりと考えた。 しばらくして小さなため息と共に、緋色の頭に温かく大きな手が乗った。 「怒ってない」 「うん」 「でも心配した」 「うん」 「俺だけじゃない。あいつらもだ」 「うん」 「だからと言ってお前が謝る必要はない」 「……」 「心配されたことに謝罪はいらない。お前は何か勘違いしている」 「……勘違い?」 「お前の謝罪には謝罪しかない」 緋色が問えば東別は小さく頷いた。 そして答えを言ってくれたのだが、どうにも理解しがたかった。 「心配されることになれてないんだな」 首をひねる緋色に東別はどこか寂しげに呟いた。 今までに見たことのない東別の表情に、緋色はなぜか温かさを感じた。
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