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「……そうだ」
弥七は歯を食いしばり、刀を握り締めた。何故今まで忘れていたのか、それが不思議でならなかった。
「本多忠勝。俺はお前に恨みがある」
弥七は鋭い眼光で忠勝を射抜いた。無傷の武将と言えどもこれは防ぎようがない。
「……それがこの忠勝を倒さんとする力の源か」
忠勝は槍を構えた。目の前の雑兵は刀を握るだけで構えようとしない。
「そうだ。お前の首さえ取ればそれでいい。それで俺も、父上も……苦しみから解放される」
弥七は刀を忠勝の首に向けた。彼は仇敵を前に連吾川の水音のように静かでいた。
「……新田弥七、いざ参る!!」
弥七の突撃速度は速かった。忠勝にほんの数歩で近付いて懐に飛び込んだ。忠勝は反応しきれていない。
「くたばれ!!」
弥七は叫び、刀を振り上げた――。
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