907人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
ザワザワと行き交う人の波。
いつ来ても賑やかだなぁ、と内心辟易して、広い駅の構内を歩きながら電話をかける。
「───あ。カルマ?」
2回のコールで出た相手に、少し驚いた。
『お前、今何処だよ』
ちょっと不機嫌そうな声音。
それもそうだろう、待ち合わせ時間はすっかり過ぎ、30分遅れの到着なのだから。
「ホントにごめんなさいっ! 今、駅着いたから。何処行けばいい?!」
携帯相手に、頭を下げながら謝る私は、足早にカルマの待つ喫茶店へと向かった。
駅ビルの中を、溢れる人ごみを掻き分けてたどり着けば、ガラス張りの外装からカルマの姿が見えた。
不機嫌丸出しの、腕を組み少し横柄にふんぞり返ったその様子に、思わず苦笑する。
ドアベルを鳴らして店内に入ると、その音に反応した二,三組の待ち合わせらしい男女の視線がこちらに向けられたけれど、カルマは態勢を崩すことなく煙草をくゆらせている。
席へ案内しようと出て来たウェイターに、「待ち合わせです」と言ってカルマの向かいに腰を下ろした。
最初のコメントを投稿しよう!