【二章】

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 目についた飲食店に入ると、二人席で店の端に座る。 甲冑を着たままだと恥ずかしい上にフリンだとバレてしまうため、カフェと言うよりは酒場みたいな所に入ってしまった。 「すまない、こんな場所で」 「いいのよ? ちょうどお腹空いてたし。あんまり、私もセタンタも目立ったらまずいしね。ここなら、任務明けの騎士もいるし、甲冑でも自然に見えるから」  美しい栗色の髪はランプの明かりに照らされ橙色に染まる。 クルクルとグラスを回し、両手で口に運ぶ何気ない仕草に目を奪われ、つい見とれてしまっていた。 「セタンタ?」 「綺麗になったな、エレナ」 「なっ?! 急に誉められると照れるなぁ。ありがとぉ」  まだ酒も入っていないのに真っ赤な顔をして。 昔より話し方が砕けて、会話もしやすい。 幼かったときにもっとしっかり話しとけばよかったと後悔しながら、エレナの話に耳を傾ける。 再会したときの心境を楽しそうに話していたが、それよりあれからどう生き延びたのか聞いてみたかったが、聞きにくいぐらいエレナは夢中で話していて割って入る隙がなかった。 「セタンタは格好良くなると思ってたよ。でも、私は自信あるの。私だけがセタンタを愛せるって。こんなに好きなんだもん。何十年経っても、あのときと変わらない胸の高鳴りを感じられてる。アテナちゃんには負けない自信があるよ。あっ、そういえばアテナちゃんとはキスしたの?」 「いや、ないな」 「そっか……。私だけ? セタンタとキス出来るの」 「まぁ……、そうだな」  ほんわかと表情を崩す。 それと同時に頼んでいた料理が運ばれてきて、小さなテーブルに並ばれていく。 店員が頭を下げて、離れて行くのを見送るとエレナがおもむろにスープを一掬いして、フリンの口元に運んでくる。 エレナを見ると、恥ずかしそうに笑いながら首を横に向ける。 笑顔が伝播し、頬を緩ませながらスープを口に入れた。
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