テロリスト、始動

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金の頭髪を振り乱す黒羅刹と魔術師級の素質を持った雷神は、一寸だって臆することなく戦車の前に立ちふさがる。 勇敢なんかでは断じてない。 あれは無謀と言うものだ。 無謀と言うもので、それを上から見ていた朔夜は素直にその無謀さを評価した。 (馬鹿じゃね?戦車VS人とか馬鹿じゃね?マジキチだろ。勝てるわけねぇって、いくらあいつらでも万能ってわけじゃねぇんだから。いや、マジで頭がおかしい。古代中国で鉄器を使用した蛮族に王国がどれだけ苦労したかわかってる?その鉄器の最先端に何で生身でチャレンジしてんの?時代の逆行?だから勝てないって歴史が証明してんじゃん。これだから序列持ちの特権で授業サボりまくるやつは。とにもかくにもバーカバーカバーカ!) 思いつつもしかし、恭也の強さは勿論のこと、一時的に三神を師とした朔夜は第二位の非凡な才能を直に体感している。 そうなると、勝ち目がないとは思わないし、やり方次第では充分に勝てるとも思案した。 唯一心配なのは人質だ。 いざとなれば隣で目を輝かしている年長者がなんとかしてくれると楽観視できるが、例えば万が一ありえない話だが戦車の中に人質を連れ込まれたりしたらいくら杉原だろうと簡単には手を出せなくなる。 そのために瞬間移動のできるレインコートを召集したわけだが、さすがに戦車がくるとは朔夜も予想していなかった。 「おい水色パンツの雨がっぱ。囮の駄眼鏡と人質を解放しろ」 なので朔夜は杉原の用意した無線機で連絡を試みた。 『腐れ万年すねかじりは魔界のために死ね。 今しテイる。夕闇ガ見当たラなイゾ』 「なんで悪口だけ流暢なの?死ぬの?あとせめてこの世界のために死なせろ。お前は目障りだから死ね。 一番動いてるやつがのび太以下だ。すぐ見つかる」 『貴様こそ死ね。何よりも優先して死ね。 ソンなこトはわかッてイる。ソの馬鹿がいなイと言っテいるンダ』 「はぁ?自力で脱出……できんのか、あの馬鹿に」 最もな疑問をかかえる朔夜。その耳に、何故か外の戦車から聞き覚えのある声が流れてきた。 『そこをどけ恭也と三神先輩!僕らは世界革命団だぁ!』
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