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「本当、罪作りな男だよね、大樹って」
「…は?」
ひとしきり笑い終えると、床に脱ぎ散らかした服を拾い集めて着替えながら、ソイツがぼそりと独り言の様に呟いた。
「知らないの?知らないよね、いっつもあんまり周りの事とか興味なさそうだし。
友達以外で自分に寄って来る奴ってSEXの相手になるかどうかって基準で見てそうだし」
「否、それは…」
「違うって?
でも、殆どいないよね。
大樹の周りで大樹と寝た事無い奴なんて」
本当に非道い男だ、と責め立てる様に吐き捨てられたその台詞に、それは無いだろう、と言いかけたけど、そんな短い言葉さえ、最後まで言えない内にまた弾丸の様に言葉が飛んで来る。
「どのくらいいたと思う?
その中で本気だった子。
別に大樹はさ、遊びだって明言してるし?
みんなそれを納得して大樹に寄って来てるんだろうけどさぁ」
ジーンズを履きパーカーを羽織り、一つ動作する度に強くなるソイツの語気。
なにをそんなに興奮しているのか、と責められた事に腹を立てるより不思議に思えば
「僕にしたらホント不思議。
なんでこんなのに本気になるんだろ。
誰とでも寝る好い加減男の癖に頭良いし、顔は良いし背も高いし僕より時給は良いし。面倒見は良いし、優しいし気ぃ使うの上手だし。Hは上手いし。
…なんか言ってて腹立ってきた。
こんな悪口言ってんのに全然怒んないし。
あー、ヤダ。
なんか基本良い奴じゃん、大樹って。
身体がだらし無い以外は」
最後に腕時計を付け終えて、いかにも不愉快そうにソイツが長い台詞を言い終える。
笑っているのか怒っているのか、一体どっちで結局何が言いたいんだ?
怒らないどころか寧ろ意味がわからなくて呆れ返る状況に言葉もなく只、ソイツを見上げていると、また「つまりさ、」と声が降って来た。
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