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タケルの声が薄い鼓膜を通って、ハチミツみたいな甘い痺れがカラダの芯まで浸してゆく。
「じゃあ、バーの名前にしては、あんまりいい意味じゃないじゃん」
悟られないように、姿勢を正した。
「もひとつ意味があってさ…
あのカクテルの紫色は、クレーム・ド・ヴァイオレットってリキュールなんだけど、それの商品名が悪くないんだよね」
タケルが謎かけするみたいに、上目使いで唇の端を持ち上げた。
「パルフェタムール…
英語なら、パーフェクトラブ
完璧な愛」
ニヤニヤしながら、カラダをもたれさせるのは、タケルの照れ隠しだ。
「…キャラじゃねーな」
それには答えず、腰にまわしていた手をギュッと握った。
「…んじゃ、部屋に戻って続きしましょうかね」
「しましょうかね、じゃねぇよ」
ブルームーン。
パルフェタムール。
パーフェクトかどうか…なんて、まだ分からない。
オレ達はまだ、はじまったばかり。
――end――
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