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かたいリノリウムの床は黒と赤の市松模様。
僕は一人でそこにいた。
目の前には小さな舟と、どこまでも続いているように見える川。
僕は何故かこの川があたたかくて優しくて、同時にとても厳しいことも知っていた。
僕は待っている。
それもずっと前から。
日付も時間もわからないけども、僕は長く一人だった。
その時は近いのに、まだ来ないんだ。
きっと寝坊しちゃってるんだね、あいつのことだから。
長く、長く待った。
柔らかな光を纏った、もう一人の僕がやってきた。
「遅いよ!」
僕は口を尖らせる。
待って待って待ち過ぎたからか、僕はその柔らかい光をなくしてしまっていて、それにひどく全身が寒かった。
「ごめんね。これ重くって」
そういってもう一人の僕は両手を差し出してみせた。成るほど。これは重い。
もう一人の僕は両手いっぱいに沢山の贈り物をもっていた。
期待に不安に成功に孤独な青年期。こんなにもってたら早くこれないよね。
仕方ないから僕は不安と孤独な青年期をもってあげた。かわりに僕の贈り物を一つのせる。
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