わたしとネコ、と悪魔

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にゃー。  猫は一鳴きしてから後ろ脚で首を掻きました。  言われなくても分かっている、という意思表示に見えました。ああ、もう、猫っていうのは何をしても本当にかわいいものですね……。つれない態度で私のツボをくすぐっても心変わりはしませんよ。猫を拾わないのが私の愛情ですから。  でも、せめて日中熱くないように、ダンボールを何処かに移しましょう。アスファルトとかでない土のあるとこ、人目に付くような木陰があればそこがいいのですが。 「別にねこさんを拾うわけじゃないのです。これは、これはですね……日向だとねこさんが可哀想だから持っていくだけなのです」  自分に言い訳をしてから、手提げ鞄を肩に掛けます。猫はそこそこに育っていますから、両手じゃないと辛いでしょう。腰を落とさずにダンボールの縁を持ったら、意外にもずっしりと重みがありました。この猫、中身がぎゅっと詰まっています。  大儀そうな溜め息を一つ吐いてから、ちゃんと底を持ってダンボールを抱えました。両手に掛かる重さがこの猫の体重です。ダンボールから出して抱えるのと違い、持ちづらいので余計に重く感じます。  にゃーにゃー。  不満そうに猫は鳴き声をあげます。しかし我慢してもらわないと此処で猫はミイラになってしまいます。……いやいや、流石にダンボールから抜け出すでしょうか
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