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「ふむ。ならば───」
ゆっくりとした動作で。
アルヴァが、こちらに振り返る。
「───四肢の一本や二本は頂いていくが、それでも引き留めるか?」
ツー、と。
暑くも無いのに、汗が頬を伝っていった。
「……止めておくわ。今までのが、アレでも本気じゃ無かったのが、残念な事に分かっちゃったから」
視線だけで威圧されるなんて、私もまだまだね。
「今はまだ」、私じゃ勝てそうに無い。
「ならば、私を行かせても何ら問題はあるまい。我らも、ここは放棄する」
うん。
正直な所、かなり貴重なデータも取れたし。
そもそも、当初の目的は達成されたし。
これ以上を、ってなると手痛いしっぺ返しを貰っちゃいそう。
ここで止めておくべきよね。
「今度会う時は、今よりもっと強くなってるわよ」
それでも、私の負けず嫌いは筋金入りだから。
「覚悟している」
アルヴァはそれだけ言って、一気に加速。
この戦場から離脱していった。
「……はぁ」
安堵の溜め息。
残っていた敵は、殆んどが撤退していった。
残ってる敵も、投降してきた。
「少し、遅かったか」
その声が聞こえた方に視線を遣ると、珍しく疲れた表情を浮かべた師匠が近付いてきてた。
所々、怪我もしてる。
「ううん。多分、丁度良かった」
ひとまずそこには触れないで、個人的な見解を言った。
「それなら良いんだけどな」
「それより怪我は大丈夫?」
包帯がかなり、赤く染まって見えるんだけど。
「……帰りは任せて良いか?」
「本格的に大丈夫じゃ無いのね。分かったわ」
まあ、いつもは私がその立場だものね。
たまには逆も良いわ。
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