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私を見る全身鎧の目は、激しい憎悪を宿して───いない?
あれ、絶対に怒り狂って私に襲い掛かってくると思ってたのに。
ディレクトリ操作こそまさに、私「ごとき」が使って良い魔法じゃ無い、とか言いそうだったのに。
今は驚いた様な目を向けてくるだけ。
「どうしたのよ。まさか、さっきの一撃で戦えなくなった訳でも無いでしょ?」
右腕の防御力は皆無になったと思うけど、今までの動きを考えるとまだまだ戦える筈。
この程度で怖じ気付く臆病者だとも思えない。
「……成る程」
ポツリと一言。
声色も、至って大人しめの全身鎧。
構えていた剣を───鞘に、納めた。
「何のつもり? 下手な演技なら、今すぐ止めた方が身の為よ」
いつ攻撃を仕掛けられても大丈夫な様に、魔法処理を幾つか待機させておく。
「私の名は、アルヴァ=ラフトクランズ。嘗(かつ)て、ロティルトの騎士団長を務めていた者だ」
……名乗られたんだけど。
しかも、意味が分からないんだけど。
「貴様の名を聞かせて貰おう」
………。
冗談を言ってる風じゃ、無いのよね。
時間稼ぎの必要があるとも思えない。
「ミーア=ファンクション。特に肩書きは無いけど、強いて言うなら青星(シリウス)の弟子よ」
相手が冷静に話してるし、ここで挑発は得策とも思えない。
素直に返答してみた。
「ミーア=ファンクション、か。覚えておこう」
全身鎧改め、アルヴァは───身を翻して私から離れていく。
「彼方(あちら)は既に落ちた。ミーア=ファンクション、貴様程の魔法使いと、あの方を同時に相手取るなどと言う芸当。流石にそれが出来ると自惚れるつもりは無い」
……急に謙虚になった!
一貫性無さすぎでしょ!?
「生憎、逃がしてあげるつもりなんて微塵も無いんだけど?」
内心で文句を言いつつ、口では軽い挑発をしつつ。
銀色の円───シリンダーを追加起動。
二つのシリンダーの角度を少し変えて、正面か後ろから見れば横長のバツ印になる状態に。
ちょっと射出角度に幅を持たせる。
さて、アルヴァはどう出るかしら?
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