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(SIDE:樹)
休みと言えば、だ。
たまに本屋を巡りに巡って気が付いたら、知らない土地まで来てしまうことなんて、よくある話だろ。
乗っていたヴァン(自転車)のブレーキを踏み、弁慶(携帯)で地図を確認すれば、何と結構な場所まで来ていたようだ。
帰れない距離ではないし、せっかく来たんだ、何か萌えれるようなことが起これば良いのにな、むしろ起きろ。
と思い、近場に○ックがあったから入ってみるか。
男子店員が男客に絡まれてるだけでも今の俺ならニヤける自信がある。
そう、俺は萌え不足だ。なんせ楽しみにしてたラノベの新刊が何処にもなかった。
バイソン小暮……師匠が新刊出したって言ったから探しに来たのに……あの人気作家め!
ぶつくさ言いながら、DS片手に○ックへ。
ほら、何か配信してるかもだろ。何も配信してなくてもチェック入れるからな。ビクティニは配信中に何度もリセットして貰いに行ったからな。
程よく混んでる店内で、運よくあのスペースだけに一席の空席を発見。
難無くその席に座り、何となく右隣に視線を向けてみた。
本当は端の方が落ち着くけど、先に端に座ってる相手を何の気無しに見てしまう癖がな。
視線を向けた先にいた人物は、しげしげと包装されたハンバーガーを見て、何か悩んで……て!!
隣人は、相当の、美人だった。
細身な体型だが、中性的な顔立ちで女っぽい印象はない。
光の加減で黒にも紫にも見えるサラッサラだろう髪、長い睫毛、整った鼻筋、薄い唇、覗く細い首筋。
パンナコッタ! いや、なんてこった!!
こんな所で、こんな美人に会えるとわかっていたら、休日でも構わずにサムと行動すべきだった!!
非常にサムと絡めてみたい。
男だよな、男でおk?
服装は……黒のパンツに白のシャツに赤のネクタイ、黒のベストといった随分シンプルな服装だが、やべ超似合う。
何この美人、誰か、誰か相手はいないのか!!
俺の理想的にはやっぱり相手も美形で、この美人を溺愛してればすごく美味いんじゃねぇの?
ちょっと押しが強めな俺様系も美味いな……ちょ、俺、バ会長を今すぐ召喚したいんだが!!
悶々と悩んでれば、心地好い声が俺の右側から聞こえた。
「お悩み中、大変申し訳ないのだけど、少し良いかい?」
それが、まさかあの美人だと気付くのに、俺は少しかかった。
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