膨張する不和

8/14
35597人が本棚に入れています
本棚に追加
/1035ページ
「…あ」 そうして気づいた時、神奈はひとりですべての料理を平らげていた。 自分で自分の行動に驚く。 元々大食いの気はあったが、あれほどの量を30分足らずですべて食べきったのは初めてだった。 「全部食べちゃった…」 呆然と、空いた食器を見つめる。 「…随分豪快な食べっぷりだったわね。お母さんびっくりしちゃった」 「…ごめん」 「あら、謝ることないのよ。綺麗に全部食べてくれて嬉しいわ」 母親は笑いながら言うと、イスから立ち上がって食器を片付け始める。 「お母さんのご飯は…」 「炊飯器にご飯が残ってるから、おにぎりでも作って食べるわ」 「…ごめんね」 「だから謝らなくていいって言ってるでしょ」 キッチンのシンクに食器を置き、蛇口から水を出す。 こちらに背を向けた母は今どんな顔をしているのか、神奈にはわからなかった。
/1035ページ

最初のコメントを投稿しよう!