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「…あ」
そうして気づいた時、神奈はひとりですべての料理を平らげていた。
自分で自分の行動に驚く。
元々大食いの気はあったが、あれほどの量を30分足らずですべて食べきったのは初めてだった。
「全部食べちゃった…」
呆然と、空いた食器を見つめる。
「…随分豪快な食べっぷりだったわね。お母さんびっくりしちゃった」
「…ごめん」
「あら、謝ることないのよ。綺麗に全部食べてくれて嬉しいわ」
母親は笑いながら言うと、イスから立ち上がって食器を片付け始める。
「お母さんのご飯は…」
「炊飯器にご飯が残ってるから、おにぎりでも作って食べるわ」
「…ごめんね」
「だから謝らなくていいって言ってるでしょ」
キッチンのシンクに食器を置き、蛇口から水を出す。
こちらに背を向けた母は今どんな顔をしているのか、神奈にはわからなかった。
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