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「ちょっと。パンダみたいになってるよ?」
あたしが美奈の頬を見て指摘すると、ふんっ、と顔を背けた。そうやってお姉ちゃんは子供扱いする、とかなんとか呟いている。
「仕方ないよね。生きていくためだもん」
やがて諦めたように美奈が言った言葉に、あたしは何も言葉を返せず曖昧に笑った。
寂しい思いをさせているのは重々承知なのだ。
美奈には『夜は居酒屋でバイト』と言っているため知らないけれど、あたしの夜の仕事はお水だ。
といっても体を売るわけではない。
ホステスの仕事だからだ。
両親はあたしが高校のときに交通事故であえなく亡くなり、それ以来あたしたちは二人三脚で生きてきた。
美奈は今年からバイトを始め、そのおかげで今あたしたちは生きている。
あたしがお水の仕事を始めたのは去年の暮れで、それ以前は本当に居酒屋で働いていた。
お水の仕事に入ったきっかけは、美奈が高校に入るとき、学費が必要になったためだ。
だけど、そんなことは彼女には言えない。余計な心配はかけられないから。
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