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カシャッ…
「マスター、起きてください。朝ですよ。」
カーテンが開け放たれた音と、誰かが自分を起こす声が聞こえる。
ついでに、肩を揺らされている感触も…
レンは唸りながら上半身を起こし、覚醒しきってない頭のまま軽く伸びをする。
その時、見知らぬ女性が見え――
「どちら様?」
「何寝ぼけてるんですか?それより、早く顔を洗ってきてください。寝癖もひどいことになっていますよ?」
レンは完全に開き切っていない目をしょぼつかせ、ベッドから降りる。
洗面台に向かうレンと、朝食の準備を済ませる使い魔・ノル。
もうすでに、これが朝の一場面と定着していた。
使い魔召喚から三日が経った朝。
あの後、ミオやクラスメイト達にノルの事を改めて紹介した。
不死鳥が召喚されたことは、魔方陣の異常だという事で結論がついている。
全員が、あの時の魔方陣の異常を目にしていたので、説明にはそれほど時間が掛からなかったが、別の問題が発生。
不死鳥が人間に擬態出来る事態を知った男子生徒たちから、妬みの視線を集中放火されたのだ。
なんせ、こんな美人が自分に仕えてくれているのだ。
そりゃあ、妬まれて当然。
しかしレンは、ノルの事よりも、自分の周りで起きているトラブル続きの方で、疲れが出始めていた。
それに加え、ノルが地球の事について余計な発言をしないかどうかの心配も増えたわけで……
(…こっちの世界に、育毛剤とかあんのかな…)
気苦労で、将来禿るんじゃないかと心配になり始めていたレンだった。
「どうする?今日は一緒に学園に来るのか?」
一応、使い魔を学園に連れ込むことは許可されている。
学園内には使い魔を放し飼いできるスペースもあり、昼間大半の生徒はそこに使い魔を放っている。
一応、授業を妨害しない限りは、教室に使い魔を連れ込むことも出来る。
現に、マオはクラス中の人間から可愛がられていたりする。
フェルトもスノーを連れてきて、休み時間は癒されていたり、ロッティのクゥは時折ロッティの肩に乗っているのを見かける。
「そうですね……。買い出しも昨日で済ませてしまいましたし…。今日はご一緒してもよろしいでしょうか?」
ノルとはあまり、距離が縮んだという実感が湧かない。
まぁ、まだ知り合って三日だ。
あの時の約束だって、そう簡単に果たせるわけでもないだろう。
「あぁ。ただ、頭じゃなく肩に乗れよ。あと、授業中に飛ばないようにな。」
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