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「ありがとうございました」
1週間振りの外は、見事なまでに晴れていた。まるでペンキを溢したかのような、真っ青な空。
ゆっくりと動く雲の群れ。ここ最近は雨が続いていたので、今日もと思っていたが晴れてくれて良かった。
「退院しても、無理はしないで下さいね」
皺や汚れが見られない白衣を身に纏った医師が言った。
「はい。妹を宜しくお願いします」
軽く頭を下げ、病院に背を向け歩き出した。3日前に抜糸したばかりの腹の傷が痛む。
その痛みは体の内側から強く鼓動をし、まるで何かを訴えかけてきているようにも思えた。
「大丈夫だ、兄ちゃんが仇を取ってやるからな」
そんな想いと同時に、あの日のことが脳内で再生された。
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