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支離滅裂。
なにを言っているか理解が出来ない。
まさしく前川が、言いそうな言葉だった。
それを遥が、笑い声を上げながら叫んでいる。
「……遥!」
体を激しく揺さぶる。
「前川さんに頼まれたの。あなたの駆除に失敗した時は、私が代わりに駆除して下さいって……
可哀想な前川さん。馬鹿な人間達が沢山いるなかで、彼だけは違っていた。
私が前川さんの代わりに、人間を駆除するんだ……!」
恐らく食事の時にでも、盗んだのだろう。
1本の茶色い箸が、俺の目前に迫ってきた。
「遥!もう戻れないのかよ!?」
瞳ぎりぎりで止められた先端が、再び高く上げられていく。
「戻るもなにも、これが私なんですよ」
振り下ろされた腕。
先端は真っ直ぐに、俺の瞳へと向かってきている。
畜生。
……畜生!
火事場の馬鹿力という言葉があるが、まさにそうだった。
力任せに体を起こし、遥を突き飛ばした。
落ちた箸を投げ捨て、遥に飛びかかる。
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