本の虫

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 昔、おじいちゃんの家に遊びに行った時の事。おじいちゃんの部屋は2つあり、1つは寝室。もう1つは本が天井まで並べられた図書室のような部屋。おじいちゃんは気が付くと必ずその部屋に居て大きなロッキングチェアに腰掛け、部屋の天井まである大きな窓の光だけで古びた大きくて重い本を読んでいた。目が悪くなるとお母さんに叱られてもしらんぷり。おばあちゃんが言っても聞く耳を持たなかったみたい。でも、そんなおじいちゃんも僕の質問にだけは答えてくれた。 「どうしてそんな難しい本を読むの?」  おじいちゃんは本を膝に置いてゆっくりと僕の方を見た。 「おじいちゃんは、この世界より本の中が好きなんだ。」  本の中には自分では体験できない世界が広がっていて、本を読むと特定の人物に感情移入してその物語の1ページになるらしい。 「亮は本は好きか?」  僕はまだ絵本しか自分で読めないけど、本はキラキラしててワクワクできるから好き。って答えたら、私と一緒さ。と小さく顔の皺を寄せて笑った。 「ここは私の父から貰った部屋なんだ。」
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