賢者

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 かつて彼は神に挑み、破れた。今は荒れ果てた古城に誰とも会うことなく一人佇む。  人々の記憶から忘れ去られたが、彼は初めて神に挑んだ偉大な愚者である。  また唯一、光となることなく、永遠を与えられ、苦悩を彷徨う戒めの存在となったものでもある。  彼は常しえの命を与える稲妻に貫かれたそのとき、全てが記された永遠の物語を見た。  希望と光に満ち溢れた黄金の物語を。  同時に、永遠を想う希望と光の意味を知り、果てなき命の辛苦を味わうことで孤独の闇に落ちていった。  そして、暗く深い独りのなかで、希望と光を見、永遠の命の言葉を残す。  その黙示的言葉を人は畏れ、彼を全てを知る賢者と称えた。
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