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家を出る。
現在、8時21分。なんとかなるかな~? って感じの時間帯だ。
自転車を全力でこぎながら、ひたすら学校を目指した。
バイクくらいスピード出てるんじゃないか? と自分でも、出している速度に驚いている。
信号は基本的に無視だ。
行けるなら赤でもゴー。
遅刻寸前の俺のモットーが、赤でも進む、黄色なら胸張って進め。って感じだ。
本気で自転車を進ませた結果、学校の正門を通ったのが8時28分。
ギリギリセーフだ。
自転車を駐輪場に置き、朝からの予想外な運動によって垂れてくる汗を、右手で拭う。
「まぁ、俺ほどの人間にもなれば、これくらい朝飯前なんだよ」
朝飯食ってないけどな……。
なんてことを呟いていると、正門の方から俺と同じように自転車を進ませる女生徒が見えた。
あいつは───。
ジーッとその女生徒を見ていると、徐々に近づいてくるわけで、ブレーキはしてるんだろうな……
でも
「ちょ、止まれやァァァ!!」
止まっていないんだよ、自転車がさ。
結果、俺は猪のように突進してくる自転車と正面衝突するわけで。
「ゴフッ……」
「キャッ!?」
何が『キャッ!?』だよ。
まず、謝りやがれ。
とか思ってると、その女生徒は謝るとか以前に、こちらを向きさえせずに自転車を起こす。
そのまま、駐輪場に自転車を置き、校舎の中に入っていこうとしやがった。
「おい、ちょっと待てよ!」
俺がソイツの肩を掴み、こっちを向かせる。
が、肩をブンっと動かし俺の手を払う。
「触らないでよ、バカ」
コノヤロォォォォ。
そうさ、コイツが……
この、常識知らずのウザったい女こそが、俺の幼なじみであり、しかし、それ以上に
─────犬猿の仲。
の関係を持つ、犬川春菜だ。
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