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大晦日。
雷太が今年最後の仕事を終え、アパートへ帰宅すると、台所では銀二が忙しなく料理の腕を振るっていた。
二人用の小さなお重に綺麗に並べられた、色とりどりの料理。
「煮物は分かるが、伊達巻なんて良く作れたな……栗きんとんまで……。」
「ばーちゃんに教わって練習した!」
銀二は褒めて褒めてと言わんばかりに、得意気にお重の中身を見せる。
テーブルの上に並べられた材料を見ると、前もって言わずとも、年越しそばの準備もちゃんとしてある。
「えらいえらい。そば用のエビの天ぷらまで用意してあったら完璧だったけどな。」
「えっ?!あっっ!!」
ネギと七味まではちゃんと買ってあったが、サブメインである天ぷらを忘れるのが銀二らしいと言えばらしく……。
自分の在り得ぬ失態にしゅんとなる銀二。
そんな恋人に雷太は苦笑しつつ、スーツを脱ぎ、スウェットへと着替える。
「イベント好きなお前の事だ。そばは日付が変わる直前に食べるんだろう?」
「うん……。」
「夜中に油物食べると胃もたれしそうだから、別に無くても良いさ。今から買いに行くのも面倒だし。」
珍しく優しい言葉を掛けてくれる雷太を銀二は見上げ、元気を取り戻し満面の笑みになる。
何だかんだ言って、何もかもが正反対の二人はこうして上手くいってるのだ。
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