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冬の冷たい風が、彼女の残り香を吹き飛ばしていく。
消えないで、と願ってもそれは叶わない。
彼女の肌のぬくもりも、徐々に失われていく。
けれど記憶の中の彼女の熱が、俺を捕らえて離してくれない。
どうしようもなかった。
失うくらいなら、変わらない方がいいと思った。
それは間違いじゃなかったはずなのに。
離れた途端に感じるこの喪失感には、慣れられそうにない。
そしてまた俺は、彼女にメールを打つ。
彼女に触れられる幸せで残酷な夜を待つ。
俺を狂わせる『悪い肌』を思い、眠れない夜を数えながら。
END.
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