第零章 大統領選出計画

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「この事態をどう収拾されますか、シュナウド【元】副大統領?」 鋭いナイフのような目つきで、四角く陣取られたテーブルの中央から相手を見据える男。 13席設けられた椅子に掛けているのはわずかに5人。 今しがた口を開いたのは危機管理対策局・魔局長のマシュフォワールだ。 七三にきっちりと分けた髪が、神経質そうな逆三角形の顔をより際立たせる。 「そう、申されましても……」 指を忙しなく動かし、丸顔の男は俯いて小さく呟く。 屈強な体躯と対照的に、縮こまっている姿は叱られてうなだれる子供のようだ。 「このまま統制が無い状態が続けば、暗黒時代の再来となりますよ。 前大統領は、ベルフェゴール家出身のわりには歴代に比べてマシではありましたが。 最後にはやはり血統が出てしまうものですねえ」 「はあ……」 シュナウドのため息にも取れる返事に、マシュフォワールの目が険しくなる。 「あなたはこれまで、大統領補佐として何をしてこられたのでしょう。 まさか、この期に及んで自分が大統領になるなんて思ってもいなかった、などと言うつもりでは無いでしょうな?」 「そんなことは……」 口元を動かしてモゴモゴと呟くシュナウド。 その声は今にも消え入りそうだ。 「ちょっと失礼」 マシュフォワールは黒光りするスーツの懐から縦長の機械を取り出すと、素早く操作を始めた。
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