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生者が死者を引きずって生きていくのは、当然の事。
死を認め、その上でしっかりと生きていくのが、私の使命なのだろう。
だが、復讐に生きる事がしっかりと生きていく事になるとは言い難い。
そう考えると、やはり乙も……。
そこまで考えて、私は首を左右に振る。
どうしても、思考が堂々巡りしてしまう。
乙が復讐を望んでいようと、そうでなかろうとも、どちらであっても違いなどない。
結局のところ、私は立ち止まるつもりなど無いのだから。
それは半ば開き直りにも近い考えであったが、同時に私の心を的確に表した一言とも言える。
私はモリアーティを許さない。
その思いさえ忘れずに居られれば、それでいい……。
しかしそんな私の思いとは正反対に、どうやら砂田さんの意思は復讐よりも谷口さんの言葉に傾きつつあるようだった。
彼は苦虫を噛み潰したような表情と共に、胸元の谷口さんを見下ろしている。
その表情だけでも、彼が今どのような思いでいるのかは見て取れた。
……私ももし、彼のように復讐なんてしてほしくないと言われれば、迷ってしまうのだろうか。
尤も、乙が意思を伝える事の出来ない状態である以上、私にはそんな事知りようがないのだが。
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