5 招待状≒挑戦状

69/70
2795人が本棚に入れています
本棚に追加
/1362ページ
「でも……美香……。俺は復讐をしなければ、本当に君を護れるのかな……?」 言いながら砂田さんの目が、実に辛そうに閉じられる。 言葉を聞く限り、復讐をやめる方に傾いていると言っても、迷いは拭いきれないらしい。 まぁそれも、当然の事なのだろうが。 谷口さん自身もその事を感じ取っているようで、暫くは言葉を選ぶように黙り込む。 何度自分は大丈夫と言ったところで、そんな言葉では砂田さんを復讐の楔から解き放つ事は出来そうにない。 だからこそ彼女もまた、口にする言葉を悩んでいるのだ。 やがて閉じられた砂田さんの瞳から一筋の涙が流れた頃、谷口さんは顔を上げながら口を開く。 「じゃあ……ヒロがそれで納得出来ないなら……。来世でも、私を護ってくれる……? また私を見付け出して、一緒に生きてくれる……?」 彼女がそう口にするのと同時に、砂田さんの頬から滑り落ちた涙が、谷口さんの瞳へと吸い込まれていった。 しかし当然の事ながら、霊体である彼女の身体は、砂田さんの思いが込められた雫を受け止める事が出来ず、涙はカーペットへと飲み込まれていく。 ……彼女は砂田さんの思いを受け止める事が出来ず、砂田さんは思いを込めて彼女を抱き締める事が出来ない。  
/1362ページ

最初のコメントを投稿しよう!