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取り調べ室にいた正一は、無精髭に目の下の隈が目立ち、疲れた様子だった。
しかし、刑事が部屋に入ってきた事に気づくと、気丈に背筋を伸ばし、もう何度言っただろう台詞を口にした。
「刑事さん!和也に会った?和也今どうしてる!?頼むから、和也が無事かどうか、調べてくれよ!!」
あきれたようにため息をつく。
「そんなに気になるなら、自分で見てこい。」
「は?」
「だから!…お前はもう釈放だ。帰っていいぞ。」
さっきまでの剣幕が嘘のように、バツが悪そうに目をそらしたままの刑事。
「…なんで!?」
「相沢和也が、この誘拐は全部自分の狂言だったと証言した。出ていった母親に会いたくて、騒ぎを起こしたんだそうだ。…お前らは何の関係もないそうだ。たまたま店の前を通り、利用しただけだとよ。…しゃべった事もないし、名前も知らないそうだ。」
「嘘だ!!和也…!…ちょっと刑事さん!そんなのまさか信じてないだろ!?だって、アンタ俺捕まえた時、和也が俺の名前呼んでたの、聞いてただろ!?」
食って掛かる正一。
刑事は黙って聞いていたが、やがてギロリと正一を睨み付けた。
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