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あれはまだ、私達が6歳で小学生だった頃、あの日も今みたいに桜が満開の季節だった。
「ヒロくん、本当に行っちゃうの?」
「うん」
「やだっ、私も行く!連れてって!」
私たちの側には満開に咲いた桜、ソメイヨシノの木。ヒロくんは散りゆく花びらを寂しそうに見つめ、繋いだ手に力を込めた。
「リーちゃんとは行けないんだ」
「どうして?」
「……どうしても。また必ず会えるから、僕が帰って来るまで待ってて?」
「いつ帰って来るの?明日?その次?」
「すぐには無理だけど、僕が大人になって、りぃちゃんを守れる強い男に成長して帰って来るよ。そしたら僕と結婚しよう」
「約束だよ」
「うん、約束。はい」
ヒロくんは薄茶色の瞳を細め、私の小指に自分の小指を絡めて指切りを交わす。
そして“約束の証”として満開の桜の下、ヒロくんが青で私は赤の玩具の指輪を交換して
離ればなれになった――
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