プロローグ

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プロローグ

揺れる電車の中。 温かすぎる空気の中で、霞野恵梨妃(カスミノエリイ)は、夢と現(うつつ)をさ迷っていた。 夢の中で少し怖い思いをして、怯えて現へと戻る……。 それを何度か繰り返す。 ……でも。 それは『ゴンッ』という派手な音とともに一気にかき消されてしまった。 代わりにジワ~ッとした痛みが、後頭部に滲(し)みてくる。 「いたた……」 エリイは、呟きながら頭を擦(さす)って目を開けた。 振り向いて、どこにぶつかったのかを見れば、そこは思い切り窓の角。 ……これは痛い筈だ。 エリイは大きめのキャリーバッグを手にしたまま、乗客も疎(まば)らな車内を見渡して吐息する。 ああ、日本に帰ってきたんだっけ。 思い出して、寝ぼけた頭を振り払った。
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