第五章

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近藤への挨拶を済ませると、歳は試衛館から出かけていく。 その背に石田散薬を詰めた薬箱を背負って…。 ゆきは以前、惣次郎達に歳が何をしてるのかを尋ねた。 歳はゆきに隠していたのだが、惣次郎達はすんなりと教えてくれた。 「そうですねぇ…あれは何と言うべきでしょうか…。」 惣次郎は珍しく言葉を探している。 「土方さんさぁ、薬箱背負って道場巡りしてんだよ。」 「あっ、簡単に説明すると…薬の押し売り…です。」 平助の修飾語のない簡単な説明に、惣次郎は言葉を見つけ笑顔で言った。 「おし…うり…。」 ゆきは想像すらしていなかった言葉に、驚きを隠せない。 「はい、押し売りです。 道場を訪ねては、試合を申し込み、その相手をめった打ちにするんです。 それで、石田散薬は様々な怪我などに効く万能薬だからと言って売り付けているんですよ。」 「可哀相…。」 惣次郎の話しを聞き、ゆきはそう言葉を零してしまった。 「ゆきもそう思うよな」 突如声をかけられ、驚きながらもその方へ顔を向けた。
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