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「ただいま」
「おかえり。遅かったわね。また寄り道をしていたんでしょ」
台所から、いつものママの声が聞こえてきます。その声を聞いて、寛太郎は思い出しました。おじいさんとの事で忘れていた『代表選手』の事です。寛太郎は、植木鉢を下駄箱の上にそっと置いて、台所に向かいました。
「ママ、僕ね、決戦リレーの選手に選ばれたんだよ」
寛太郎は片手を腰に当て、もう一方の手でVサインを作って、元気な声で言いました。
「あらっ、凄いわね。おめでとう。みんなで応援に行くから、頑張ってね」
ママも、ニコニコ顔で答えます。
「お祝いに、丁度良かったわ。今晩のおかずは、寛太郎の好きなハンバーグよ。それに、おやつのプリンも、冷蔵庫にあるわよ。手洗いとうがいをしたら、食べていいわよ」
「やったあ」
寛太郎は、ジャンプをして喜びました。すると、ママがいつもの様に、言いました。
「こらっ。あまりはしゃいでいると、けがをするわよ」
寛太郎は、うがいをしながら、おじいさんとの事をまた思い出しました。そして、うがいを終えると、ママに、
「今日はお部屋で、おやつを食べて良い?」
と、聞きました。ママはご機嫌なようで、
「良いわよ。ちゃんと『いただきます』をしてね」
と言ってくれました。寛太郎は、スプーンを取って口に咥えたまま、
「いららりらーす」
と言って、冷蔵庫からプリンを部屋に運びました。それから玄関に植木鉢を取りに行き、部屋の机の上にそっと置いて、椅子に座りました。そして、机の上の鉛筆立てからサインペンを取り、そっと土をほじくってみました。
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